【 会員の随筆 「空の散歩」 】 −NO.10−
          
  
  
〔回数〕 〔掲載日〕 〔 路 線 名 〕  〔  航 路 事 情 〕 〔 訪 問 都 市 〕
第10 回  2009.7.1 モスクワ経由ヨーロッパ路線 モスクワ → パリ・ロンドン ロンドン

モスクワ経由ヨーロッパ路線    
 ◎ ロンドンと言えば 大英博物館  

大英博物館



ミイラの部屋にある像
 市街の西方に位置するヒースロー国際空港は着陸後、降機スポットまでが遠く、右折、左折ごとに標識が設置してあるほどの複雑な誘導路で知られているが、定宿「ホテル・シェラトン」はハイドパークに近いパークレーンのホテル街にあり、極めて分かり易い。
ホテルへ行く車窓から見える街並みの一部は古色蒼然としたレンガ色で統一され、大英帝国らしい荘重な雰囲気を醸しだしていた。
 部屋に入って旅装を解き一息いれた後、胸を躍らせて大英博物館へ急いだ。午後5時30分の閉館まで残された時間はそう長くはない。早足で階段をかけ上り、エジプト室の「ミイラ」と棺のあるコーナーを見ることにした。
 平日のせいか来館者は少なくミイラの納められた棺の中をじっくり観察できた。ガラスケースに収容された女性らしい遺体は3000年の時間を経過したようには見えず干からびてはいるが生前の姿を保っているかに見うけられた。
その他の棺の蓋は「再生」を表す図柄に装飾されていた。
 帰着後「ミイラ解体」の文献で調べると、古代人は『その霊が遺体に戻って来ることを信じ、死後の世界で快適に生きて行くために遺体を永久保存し、死者の人格を永遠に保証する意味で「ミイラ」作りにエネルギーを費やした』と書かれている。
 遺体は洗浄され、腐乱しないように脳や内臓が取り出された後40日間天然炭酸ソーダーで水分を吸収し乾燥させた。いずれにしても生前と変わりない外見を保たせるため特別な技術を用いたとされる。死亡と埋葬の間は常に70日間の期間があったという。
 粛然として座っている「ミイラ」を前に一声かければ言葉が返ってくるような親近感を覚えた。

 
 

翌朝、樹葉が緑に染まるハイドパークを散策したあと、勤め人で混み合う小さな喫茶店でイングリッシュ・ティーを注文した。
正午前には再びモスクワへ飛び立つことになろう。


ハイド・パーク
     
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                   山城高4回卒  吉田 和夫

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