【 会員の随筆 「空の散歩」 】 | −NO.4− |
〔回数〕 | 〔掲載日〕 | 〔 路 線 名 〕 | 〔 航 路 事 情 〕 | 〔 訪 問 都 市 〕 |
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第 4 回 | 2009.2.1 | 太平洋航路 | 東京 → ウエーキ → ホノルル | ウエーキ |
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◆太平洋航路![]() |
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◎ 航路事情 |
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![]() 太平洋航路 |
東京サンフランシスコは、1954年2月、JALのDC6Bプロペラ機により開始された。乗客は僅か21名、31時間もかかったのは今から50年以上前のことである。 その後機種もDC7C、DC8、B747ジャンボ機と高速大型機へとめまぐるしくかわったように航法(ナビゲーション)も進歩し、ジャンボ機就航と同時に搭乗員〔機長、副操縦士、航空士(ナビゲーター)、航空機関士〕のなかから最初に航空士は姿を消した。それは*慣性航法や*衛星航法の開発進歩によって彼らを不要としたからである。 一方、機内の快適性はジェット気流の流れ方に大きく左右された。冬季東行便は、時に高高度を西から東へ吹く秒速100メートル(時速360キロ)にも達するジェット気流を追い風として利用し、飛行時間の短縮や燃料節約に挑戦した。しかし生憎ジェット気流に隣接する空域は空気が乱れ、長時間機内は、車で小石の上を走るような不快感が続くことが多かった。 |
◎「ウエーキ島」の残照・南十字星 |
東京から南東約3200キロ、ホノルルより西方3700キロの南海の孤島ウエーキはウイルクス、ピールの3島からなり、戦前アメリカではすでにパン・アメリカン航空が、クリッパー飛行艇を使って米本土からハワイ、ミッドウエー、ウエーキ島から米領ガム島を経由、フィリピンのマニラに至る太平洋横断の定期航空路を開発していた。(日本民間航空史話) 太平洋戦争が始まってからは米海軍航空隊の戦略上の拠点として基地が作られた。1941年12月に激戦の末、日本軍が上陸、占領して一度は大鳥島と名付けたが、やがて戦争末期に米軍に奪還された歴史がある。 筆者が航空士として飛び始めた1958年頃、飛行距離の短いDC6Bではホノルルまで直行できず燃料補給のため止むなくこの島に寄港した。東京からほぼ7時間飛行した搭乗員はここで降機し、先便で在島中の搭乗員がホノルルまで約8時間の飛行をしたのである。 従ってこの島には米軍、航空管制官、気象技術者を含む政府関係職員の250人ほどが常駐しているだけで、まさに米海軍航空隊、パン・アメリカン航空のための島であった。 |
![]() DC6Bプロペラ機 ![]() ウエーキ島 |
![]() 当時の機内食 |
戦後10年、戦争の傷痕を伝えるものとして、草むらに放置されたままの錆ついた野砲や岩礁に乗り上げた輸送船「諏訪丸」が無残に朽ち果て、暗灰色の船橋の一部を海面に突き出しているのを眼前にして敗戦の冷厳なる事実を思い知らされた。 1958年9月12日、日米安保条約改定に同意、藤山、ダレスの共同声明に調印した岸内閣の外相藤山愛一郎(元、日本航空初代会長)が、米国からの帰途この島に立ち寄った。たまたま在島していた筆者は、銀髪を風になびかせ、日焼けした顔を真っ白いハンカチで拭いつつ、タラップから降りてくる雄姿を見かけたことがある。 |
この孤島では、女人禁制(スチュワーデスは風紀上の理由で降機しなかった)によるものか女性を見かけたことはなく、生活文化の匂いは殆ど感じられなかった。 次便が来るまでの3〜4日間(週2〜3便)、時々同僚と海に潜り、サザエやウニなどの魚介類をとって 夏の日没直後浜辺に佇むと、果てし無く広がる大海原の上に南十字星が青い光を放ち、潮の香と共に渡ってくる涼風が筆者の心を癒してくれた。 |
![]() 南十字星 |
*慣性航法 航空機に、重力の方向に対し常に平衡状態を保つジャイロを使った水平安定板を設け、ここに 高感度の加速度計を置き、加速度を検出し、内蔵したコンピューターで速度、位置、進行方向 などを求めて航行するナビゲーション。 *衛星航法 全地球を有効範囲とする人工衛星を利用した航法で人工衛星の位置が正確に捕捉できること から複数の衛星から同期をとって発射された電波が航空機で受信されるまでの時間差から、 各衛星に対する航空機の距離を知ることができる。 *ロラン局 2定点からの距離の差が一定な点の軌跡は、その2定点を焦点とする双曲線になるという 原理を利用して現在位置を知る方法で、その電波を発射する地上施設の一局。広島に原爆を 投下した「エノラ・ゲイ」機はサイパン島から飛び立ち、このロラン局を利用して自機の位置を 確かめていた。 |
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![]() 山城高4回卒 吉田 和夫 |
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