【 会員の随筆 「茶会の客振り」 】   −NO.1−
 今回は山城高校第4回卒業 澤 (旧姓山下) 美枝さんに登場願いました。
澤さんは現在、彦根市にお住まいで、観桜茶会等の茶事をされています。
          
  
〔掲載順〕 〔掲載日〕 〔卒業年〕 〔卒業回数〕   〔 氏 名 〕 〔タ イ ト ル 〕
第 1 回 2009.5.1 S27年 山城高4回  澤 美枝 席入り編
 
 
  「茶会の客振り」は、山四会(山城高4回)の仲間を対象に書かれたものですが、この度、澤さんの
 ご了解を得て、会員の皆様にホームページでご紹介させていただくものです。
 4編に分かれていますので4回に分けて掲載します。(月1回)

  「茶会の客振り」
    (1) 席入り編             (2009.5.1付 掲載)
    (2) 炭点前・懐石編         (2009.6.1付 掲載)
    (3) 後座編              (2009.7.1付 掲載)
    (4) 表千家流のお茶のいただき方
                          (2009.8.1付 掲載)
 ご挨拶

私は客(地元の名士)を招いて 茶事を毎年しまして 早40年に
なります。
新年の初釜(1月) 観桜茶会(4月) 初風炉の茶事(5月) 朝茶
事(7月早朝) 観月茶事(9月中秋名月) 口切茶事(11月茶壷
の口切)などなど お茶は特別な作法に拘ることなく 日本の暮ら
しです。
 お客を招いてのおもてなしで 今はほとんど形にとらわれた作法
になってしまいましたので 殿方にそっぽを向かれるようになって
しまい残念。
 そこで 山四会の殿方をお迎えした時 是非 客になって恥を
かかない知識をと希望があり 書くことになりました。
利休の頃より 世の中を動かす殿方のサロンです。早く殿方に
お茶を取りもどして頂きたいと 願いつつ 書きました。
                               
                         澤 美枝 拝

茶会の客ぶり  席入り編 
                                    解説   澤 美枝
 基本的には 紳士 淑女であれば 即ち 常識的な 言語 行動ができれば充分ですが、今回 もう少し踏み
込んでの作法をご希望のようですので一応此処まで出来れば 何処へ招かれても 恥ずかしくない客振りを
解説します。この解説はどの本にも書いてない私の茶道の修行の中で習得した知恵です。
釈迦に説法の無礼をお許しください。

 ○茶事の招待状を受け取ったら 出欠の返事。
 ○前日に前礼に行く。
     (これは初めてのお宅だと道順 所要時間など確認のため。又 亭主側としては、忘れないで 時間          通りに来られるかどうか気になるので 電話でも良い。またそうかと言って 連客全員が電話
       するのも煩わしいので正客なり代表者なりが、代表で行くなり電話するなり)
 ○当日、時刻20分ほど前に到着出来るよう。
 ○玄関が手がかり(手の入る位の隙間)ほど開いているのは 「お待ちしておりました!どうぞお入り
   ください」の意味。
      ☆チャイムしたり、「こんにちは」の声をかけない。
         (亭主は本来家族のみで小人数でお迎えの用意をしているので出迎えの手間をかけない)
         遠くからでも玄関先に水打ちがしてあるので、すぐ目的のお宅だと判る。
      ☆ 来駕の際、駕籠(「案内状に御来駕賜りたい」と書いたのでつい こう書きたいが)車でお越し
        になる場合は玄関先まで乗り付けないで、少し手前で降りてゆっくりと歩いて行く。
      ☆ 手がかりの開けてある玄関から入り、後続の連客がある様子なら完全に閉めず手がかりを
        残しておく。完全に閉めてあると未だ準備中ということになる。この場合、外で待つのが
        作法であり、次の客が入れないことになるので気を付ける。
 ○「寄り付き」の部屋まで手がかりの開いているのを確認しながら入る。自分が部屋に入っても手がかり
      だけ開けて 閉める。
      ☆ 寄り付きの部屋では 羽織を脱ぎ 袴をつけ 道中足袋を履き替え、ふくさ、懐紙、懐中扇子を
        手に持つ。
      ☆ 先ず 寄りつきの部屋の床の間の掛け軸など拝見。
      ☆ たばこ盆 「どうぞおくつろぎください」の意。(たばこ盆に火入れ、火、灰吹きが用意されて
               いるが煙草、煙管はまだこの時点では自分のものを使い 火は借りて良い。
      ☆ この頃まで本来亭主側の姿はない。寄り付きで客が落ち着かれたら 半東(アシスタント)が
        白湯を運ぶ。
         (これは何時も話してる通り「我が家の井戸水の味はこんなものです。これから茶を点てる
        釜の湯はこんな味です」という意味で白湯を出す。これは「守」ですが そのうち「破」「離」
        の境地まで行くと これが冬は「甘酒」 夏は「冷たい梅酒」になったり アレンジされる事が
        ありますが本来は白湯です。
      ☆ お手洗いなどは この時点で半東から案内があるので必ず使わせていただく。(茶室に入っ
        て約2時間ほど、途中で立つのは迷惑。これ心得ごとです。止むを得ない時は可)
      ☆ いよいよ案内。「腰掛までお出ましください」。 買い物の順番を並ぶみたいにぞろぞろ付いて
        行くのは不可。一人づつ露地草履を履いて 露地の飛び石、植え込み、茶室の外形などゆっ
        くり見ながら進む。(寄り付きを出るとき お詰の客は襖はきちっと閉める)
 ○腰掛に進む。正客は腰掛に用意されている円座の上に座り(たばこ盆も用意されている)静かに亭主
        の迎えつけを待つ。この行動は必ず亭主側から見られています。悪い意味で覗いているの
        ではなく露路でお客様が困ったことが起こったとき 直ぐに対応出来るように見てさしあげて
        いる。
 ●迎え付け。皆が腰掛に出られて、落ち着かれた様子を確認したら(これも必ず見られてますよ)亭主は
        座掃きで茶室を掃き(これは只今お客様に通っていただく席を今一度清めさせていただき
        ますという意味で茶室が腰掛から見えないくらい離れていても音で客に判る様に大きな
        動作で掃きます。
    いよいよ亭主が「茶室の用意が整いました」と蹲踞(つくばい)に水を通い桶で最後の一杯を足す。
          「清い水でございます。どうぞ手 口を清めてください」の意。
    客の近くに進み「黙礼」します。
 ○ これは礼であって客もしゃがむのではありません。       
       頭を下げて礼をするのです。茶人でもこれを知らない人が
       ほとんど。しゃがむにあらず。
 ●席入り。 亭主が茶室に戻り 手がかりだけ開けておきます。

 ○ それを静かに見届け また円座の上に腰掛ける。
   一呼吸。自分の使った円座を後ろへもたれさせ(最後のお詰め
   の人が 皆の円座を重ねて下座の方へかたづけておく)
  
   
蹲踞に進み 手 口を清め 柄杓も残りの水でサッとゆすいで
  柄杓の合を横向けて蹲踞に返しておく.。 茶室の入り口で扇子を前に
置いて 中の様子を拝見してにじり入る。
立って
  ・床前に進み掛け軸、前に飾ってあるものなど拝見。 釜、炉縁、炭
   の様子、道具の方へ回って、棚、水指、その他飾ってあるものを
   拝見。
     
 ○自席に着く。この自席と言うのは・床の前の畳、貴人畳はさける。
     ・ 周りを取り囲む様に敷かれているのが 客畳、 ・亭主が点前をする畳は点前畳、
     ・ 茶道口近くが踏み込み畳 ・真中の畳が通い畳、・この客畳に座ります。(但し大勢でやむを得
       ないとき・挨拶の後で 亭主に特にすすめられた時などは 貴人畳も可)
 ●蹲踞に水足す。最後の詰めの客が音を立てて茶室の障子を閉めるのを確認して亭主は蹲踞に通い
       桶で高いところから滝落しとでも言うのでしょうか。すべて「音」で進行していきます。
 ●挨拶 亭主は客が座って落ち着かれたら いきなり 襖開けないで、また「音」で座掃きで茶道口を掃い
      て「もう襖 開けますよ」を知らせます。その「音」で客は雑談していても話を止め 襖が開くのを
      待つ。瞬間 緊張!! 初めて亭主が客と言葉を交わすのですもの!! 何と挨拶しようか?
       客も亭主も力試し!
      “襖が開く”
 ○正客の亭主に対する「どうぞお進み下さい」の言葉も正客と亭主の身分により異なる。
     ・ 客が私の目上の方なら『おはいり!』 くらい軽いお言葉を掛けて下さる。
     ・ 目上の方が亭主なら『どうか お進みになってください!』など。
     これは何の意味かと言うと
         ☆亭主はお客様のいらっしゃる座敷(茶室)は大事なお客様の場所。私は この水屋の
           部屋でご挨拶させていただきます。と言う意味で茶道口の外で挨拶しようとするのを
           客の方から「どうぞ 近くお進みください」と自分たちの客のいる「茶室へお入りください」
           と声をかけるので やっと茶室の中へ「失礼します」とにじりは入って初めて挨拶を交わ
           す。
         ☆客の方も同時に一にじりも二にじりもにじり進んで(今 自分の座っている場所は、亭主
           に比べると大変お高い場所 と言うことで、少しでも下座に 亭主のいる入り口に近い
           ところへ下がって挨拶しようとする動作)
           扇子を前に置いて挨拶する。連客も一人一人正客と同様に にじり進んで挨拶。
     
 このあたりの様子を 半東は襖の向こうで必ず聞いている。そしてどの位のタイミングで次のお膳を用意するかと 進行状況をはかって 台所と連絡しあう。いつ用意したか判らないような 料理屋みたいな出し方はしない。
(ごめんなさい。もし さしさわりがあったら) 時間を計って今 炊けたか
炊けないかくらいの瞬間のご飯を一口・今包丁をいれて切ったばかりのお刺身・今出来たてのみそ汁・ 温かいものは椀も皿 鉢も温め 冷たいものを 出す時は器も冷やす。当然の事ながら 台所は戦場!  


     

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