ドイツ・フィルダーベンデン校との国際交流 2009
− ドイツ交流プログラム報告 −
  ドイツのギムナジウム・イン・デン・フィルダーベンデン校と山城高校の交流プログラムの中心としてご活躍の山城高校・中田 好則先生(記事)・渡辺 一郎先生(写真)と卒業生・中村 美知子さんご夫妻(写真)による今年度の活動報告をいただきました。

ザビーネ先生(左)とアネッテ副校長先生(右)
      

 姉妹校ドイツ・フィルダーベンデン校の生徒16名と先生2名(ザビーネさんとアネッテさん)が、10月1日から19日まで京都に滞在しました。本校との交流プログラムも含めて、かなりタイトな予定でしたが、無事に終了しました。本校とのプログラムを中心に報告します。

 到着・ステイ 


交流記念撮影(山城高校にて)
 10月2日は体育祭が予定されていました。ドイツの生徒達は体育祭に参加するのを楽しみにしています。ギムナジウムには体育祭のような行事がないからです。今年はあいにく雨のため体育祭が6日に延期され、ドイツ人生徒は参加できませんでした。6日には桃山高校での交流プログラムが予定されていたからです。前日夜遅くに京都入りしているため、皆かなり疲れており、結果的には休息が取れてよかったのではないか、と思います。桃山高校では楽しい交流になったようです。

合同授業
10月2日(金)
 2日は昼頃学校に集まり、校舎見学のあと、一年生の英語の授業に入りました。ドイツ人生徒と日本人生徒がペアになり、英語を仲立ちとして、日本語・ドイツ語の簡単な練習を行いました。生徒達は大喜びで、授業の後はメールアドレスの交換や写真撮影となりました。その後、会議室で歓迎セレモニーを行い、ホストファミリーを務める生徒と共に、2泊3日のホームステイプログラムに入りました。
 プレゼンと遠足  

ドイツの生徒
10月3日(土)
 3日土曜日は、学校に集合し、2年9組(文理総合)のクラスと合同でプレゼンテーションを行いました。ドイツのプレゼンテーションでは、高校生が車で登校している、ということにどよめきが起こりましたが、ロックギターに熱中するところや、放課後友達と町を散歩したりするところは、やはり同じ高校生、国は違っても同じ文化を持っているのだと再認識しました。
 ドイツ人生徒はその後、ずいき祭りの見学に出かけ、保存会の方の説明に耳を傾けました。午後は山城高校の生徒と清水寺見学です。教室での交流プログラムもいいのですが、校外での活動では、ある程度自由に行動でき、かつ目の前に共通の「話題」がある、という状況で交流できますので、友達になりやすいのです。すぐに打ち解けて、解散した後は、思い思いにショッピングなどに出かけ、ホストファミリー宅に帰っていきました。
10月4日(日)    
 4日日曜日は、日本人生徒と合同遠足にでかけました。まず銀閣寺までたどりつくのが大変。学校に集合し、30名近い団体を市バスに乗せて、銀閣寺まで連れてくる。これは山城の生徒に担当させました。普段、利用しないバス路線で、しかも大半の生徒は銀閣寺を知りません。―われわれは案外、京都の名所を知りません―北回りと南回りのバスに分れて乗車、2台のバスがほぼ同時に銀閣寺に到着し、完璧な到着となりました。フィルダーベンデンの先生達も日本人生徒の手際のよさを大いにほめてくれました。
 銀閣寺で庭を鑑賞した後、哲学の道を散策、京都会館まで歩いて、そこで昼食をとり、午後の自由行動となりました。どうも繁華街に行ったようですが、集合時間にはきちんと間に合いました。このプログラムをザビーネ先生と始めた橋本陽生先生(=桃山高校校長)もかけつけ、生徒達にあいさつしてくださいました。ちょっとドイツ人には暑すぎる一日だったようですが、皆楽しく京都観光を楽しんだようです。
 合同授業
ドイツの生徒・書道に挑戦
10月5日(月)
 5日は午後から合同授業です。まず金曜日の一年生のクラスに再び入り、三カ国語フルーツバスケットゲームを楽しみ、その後、日独早口言葉大会で盛り上がりました。次に1年10組(文理総合)との合同授業に入り、名前を覚える、班毎にチーム名をつける、チームのシンボルを考える、といった活動に取り組みました。このクラスとは木曜日にもう一度合同授業が予定されています。放課後は芸術科の河合先生にお世話になり、書道に取り組みました。それぞれ気に入った字を練習し、最後にうちわにその文字を書き、作品に仕上げました。その時の様子が京都新聞で報道されましたので、読まれた方もおられるかと思います。2009.1.6 京都新聞記事


ザビーネ先生(左)とベレニケさん(右)
10月7日(水)
 7日は午後二時間、2年9組(文理総合)との合同授業でした。英語の合同授業は飯島先生にお世話になりました。このクラスには、フィルダーベンデンの留学生、ベレニケが一学期に在籍しており、今回ベレニケは古巣へ戻ってきたような存在でした。英語の授業の後、クラスの生徒が企画したゲーム大会をして楽しみました。こういう企画で活躍できる生徒はなかなか貴重な存在です。ともすれば知識に偏りがちな学校教育の場で、皆が楽しめる企画ができるということは、きっと将来役に立つことでしょう。
10月8日(木)
合同授業
 8日は台風のために3時間目からの授業になりましたが、合同授業は午後でしたので、影響なく活動できました。1年10組と再会、日独語によるクイズ大会を行いました。両校の校長先生の名前から始まり、ドイツ語にあって日本語にない単語、その反対に日本語にはあるけれどドイツ語にはない言葉などをクイズ形式で学んだ後、ALTのニールも交えて、日独語でのスキット(短い劇)作成、発表を行いました。典型的な日本語、「どうぞ、どうも」「どうぞ、いえいえ、まあそう言わずに」などを楽しく練習、ドイツ人生徒が発表し、その後、ドイツ語ではどう言うのだろうということで、今度は日本人生徒がドイツ語劇に取り組みました。身振り手振りを交えての語学学習はドイツ人生徒にもなかなか好評で、授業の後も「いえいえ、どうぞ」などとやっていました。

お別れセレモニー
拡大写真
 お別れセレモニー
10月9日(金)
 9日は昼休みに自治会主催のお別れセレモニーがあり、その後、着物着付けを体験しました。外国人にも日本の着物はよく似合います。皆かわいかったですよ!
10月10日(土)    
 10日の学校公開で再び、中学生向けにドイツのプレゼンをしてくれ、その後、東京に向かいました。この週で一応、本校とのプログラムは終了しました。
 短期観光
亀山公園にて
 その後のプログラムですが、短期観光として前述の
東京二日、広島日帰り、大阪日帰りなどが入りました。
それ以外に面白いプログラムが二つありましたので紹介します。
 詩の朗読会  

ドツの生徒
10月12日(月)
 一つ目は12日午後、左京区の錦鱗館で行われた日独語による詩の朗読会です。ザビーネ先生が宮沢賢治の詩のいくつかをドイツ語に翻訳、その朗読をドイツ人生徒が行ったのです。ザビーネ先生の友人、川手鷹彦氏(=言語テラポイト・演出家・著述家)が全面的に協力、ドイツ人生徒の朗読のあと、氏の朗読が続き、最後にはザビーネ先生のドイツ語と氏の日本語による朗読がシンクロ、まさにデュエットのようなパフォーマンスで、観衆は朗読後もみなその余韻に酔いしれました。詩は吟ずるもの。その原点を見たような思いでした。
 ドイツでもかつては授業で、ゲーテなどの詩を朗読するのが当たり前であったのですが、最近ではそういうことをしない若い先生も増えているとか。われわれの教室にももう少し芸術的な要素を入れてもいいかもしれません。身につけただけの知識はすぐに剥がれてしまいます。体験を通し、身体を通して獲得した知こそが、生涯に渡りわれわれを支えてくれるのでしょう。
 立命でのシンポジウム  
10月17日(土)    
 もう一つは17日立命館大学で行った、大学院生とのシンポジウムです。本校にも英語研修生として来ている生徒諸君を中心に、立命の大学院生がプログラムを組んでくれました。プログラムは、日独教育システムの違いについてのシンポジウム、折り紙などの体験プログラムなどから構成されていましたが、教育システムの違いについてのディスカッションは面白かったです。
 ドイツの生徒が大学へ応募するのに、ギムナジウムの12・3年生―つまり最後の二年です―の学校の成績とアビトゥーア(卒業資格試験)の点数が必要です。その割合がそれぞれ70%と30%になっており、学校の成績のほうが重要視されているのです。しかも学校の成績はコントロールと呼ばれるエッセイタイプのテストが50%、授業中の活動、宿題などの評価が50%となっており、この最後の二年は、生徒は毎日評価されているように感じるのです。
 このためドイツ人生徒の中には日本のシステムのほうがいい、という生徒もいます。入学試験一発で決まってしまうほうがストレスはかからないのかもしれません。もっともドイツの生徒は日本人生徒が入学試験のためにどれだけの量を暗記しなければならないかは知らないのですが。
 

嵐山・竹林の前にて
 教育システムとその「思想性」 
 この評価規準からどのような教育思想が読み取れるでしょうか。もちろん、どんなシステムにも欠点はありますし、一概にどのシステムが優れているとは言えません。しかし、現行の日本のシステムが目的としているのが、「効率よく学習する能力の開発」であることは理解しておいたほうがよいでしょう。これに対してドイツのシステムは「批判的な思考能力と人に考えを伝える能力の開発」と言えると思います。公平性・客観性という一見「思想性」を省いたかのように見える我が国の評価システムが、実はかなり特殊な能力に特化したものだということが分るかと思います。
 今後のこと
 われわれ大人が飲食を共にしながら友達づきあいを深めていくように、子どもは子どもの文化―例えそれがプリクラやポップスであったとしても―を通して友達になっていきます。国を超えて、十代の若者が自然な形で友達になっていけるこのプログラムは、やはり意義あるものであるし、発展させていきたいと考えています。ホストファミリーの確保、渡欧するさいのお金の問題などがありますが、同窓会の皆様には、今後とも色々な面でのご協力・ご援助をお願いしたいと思います。

2009年 ドイツ留学生 
2008年 ドイツ訪問 写真集
 
「山城高校と草の根交流3年目」・2007年の日本での交流
  
 
     

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